初心者に適した通貨ペア

どの通貨ペアで取引する?

 これからFXで取引を始めるにあたり、決めるべき事項があります。それは、どの通貨ペアを選択するか、ということです。ドルや、ユーロ、ポンド、オーストラリアドル、フラン、カナダドルなど、世界中には様々な通貨が存在しています。

 通貨の交換と言うと、日本人の我々は、まず円と何かを交換することが思い浮かぶのではないでしょうか。しかし、FXの取引において、日本で日本人が取引するからといって、必ず円が絡まなくてはならないことはありません。

ユーロとドル、オーストラリアドルとニュージーランドドルのような、海外通貨同士の組み合わせでも良いのです。いろいろな通貨の組み合わせが考えられる中、各通貨自体の特徴と、通貨同士の組み合わせによる特徴を合わせ、最終的にどの通貨ペアで取引を開始するかを決定していきます。

 では、初心者にとって、もっとも扱いやすい通貨ペアとはなんでしょうか?

 答えは「ドル円」のペアです。これは、実際のところ、初心者に限った話ではありません。長く取引を行っている場合でも、基本となるのは、やはりドル円の動きとなります。その理由については別項で紹介していきます。



ユーロドルも扱いやすい

 初心者に適した通貨ペア、ということで、これまでの中でドル円を紹介してきました。では、それ以外にお勧めの通貨は?と問われれば、「ユーロドル」を挙げることができるでしょう。

 欧州統一通貨であるユーロと、世界の基本通貨と認識されているドルの通貨ペアは、ドル円以上に取引量が多く、世界の取引の3割程度を占めているとされます。ドル円の通貨ペアと同様(初心者に適した通貨ペア(2)及び(3))、取引量は、大きいほど取引者にとって安心感を与えます。

 また、ユーロはドルの代替通貨としての役割も持っています。よって、米国で何か市場に影響する材料が入った場合、最も素直に反応しやすい、影響を受けやすいと言われています。そうした意味でも、ユーロドルの取引は情報を管理しやすいと考えられます。

 逆に、注意が必要なのは、「クロス円」と呼ばれるものです。これは、ユーロ円やポンド円、ニュージーランドドル円といった通貨ペアを指します。主に、クロス円は、低金利である円と、基本的に高金利である外貨との組み合わせということで、長期的に外貨預金のように取引を行う際に用いられます。クロス円の場合、二カ国間の状況の変化だけでは全てを把握できるとは言えません。その通貨以外、主にドルで何か影響する事項が発生した際の反応などにまで注意を払う必要がありますから、そのつもりで取引を行わなくてはなりません。



買いからか、売りからか

 これまでは(初心者に適した通貨ペア(1)~(4))、初心者に適した通貨ペアの種類を、それぞれのメリット・デメリットなどと共に解説してきました。実際に取引する通貨ペアを決めたら、次に選択するのは、その通貨ペアを買うのか、売るのか、ということです。株式投資とは異なり、売りからも買いからも自由に取引を始めることができるのは、FXの大きな利点の一つです。

 相場というのは、上がるか下がるかのどちらかしかありません。様々な状況の変化に応じて地合いが変化していく中で、売り買いの片側に偏ることなく、自らの予想に沿って、柔軟な取引を行うことが必要です。

 外貨預金などでは、円安局面でないと利益を得ることが難しかったのですが、FXでは、円高局面でも大きな収益のチャンスがあります。例えば、1995年に1ドル80円を割り込む大きな円高局面がありました。外貨預金などの場合、ただ損が膨らむだけだったこのような場面でも、FXなら、ドル売りからポジションを持つことで大きな収益の可能性が増えます。

 ただし、この時、気をつけたいのが「スワップポイント」についてです。スワップポイントは、取引した通貨の金利差によって発生するものです。高金利通貨売り・低金利通貨買いのポジションを維持し続けると、金利差分のコストを支払い続けなくてはなりません。例えば、ドル売り円買いなどです。

 値動きによる損益に比べて、スワップポイントによる損益は小さく、1~2日程度の短期売買では考慮する必要は全くありません。しかし、数カ月から1年といった長い期間、ポジションを維持し続ける場合は、トータルの損益にかなり大きな影響を及ぼす可能性があります。

 例えば、ドル円を買った場合を考えてみます。2006年4月時点の水準で、ドル円のスワップポイントは、1日1万ドルにつき154円の受け取り、売った場合は157円の支払いです。
 1万ドルで1円の値動きがあれば、その損益は1万円になりますから、1日・150円程度の損益は短期的にはほとんど無視できます。しかし、1年間、売りで持ち続けた場合、総支払額は5万7305円となるのです。このコストを値動きの収益で埋めるには、5円73銭のドル安円高が進まなくてはなりません。これは、なかなか馬鹿にできない金額と考えられます。

 短期の取引を行う場合では、スワップポイントをほぼ無視して、自分の予想に忠実な取引を繰り返します。取引期間が長くなるにつれ、スワップポイントを意識する割合というのは増えますから、長期の場合は、スワップポイントの支払い側のポジションを持つ場合のコストを覚悟して取引をしなくてはなりません。しかし、実際のところ、1年間の値動きは、一般的に10円以上はあります。円高局面が大きく進行するような状況だと、そのコストを払っても十分利益を得ることが可能です。取引は、あくまで値動きによるいわゆるキャピタルゲインが本道で、スワップポイントはオマケ・ボーナス程度という感覚で行うのが良いのではないでしょうか。



スワップポイントを狙う場合の注意

 FXの収益において基本となるのは、値動きによる損益狙いです。しかし、年単位での長期投資を考えた場合、「スワップポイント」がその利益に大きく寄与する可能性があることは事実です。ゼロ金利が続く円と比較して、外貨の中には高い金利が付く通貨も存在します。このような高金利通貨を買い、低金利の通貨(円など)を売る取引は1990年代から活発になってきました。主に、ヘッジファンドなど海外の大口投資家から始まったとされています。日本でも、高金利通貨に対する投資は、現在、注目を集めています。例えば、外貨預金においてはニュージーランドドル預金が近年人気を集めているようです。

 FXが1998年の法改正によって誕生してから、急激に市場を拡大していく中でも、英ポンド・オーストラリアドル・ニュージーランドドルのような高金利通貨を買い、円を売る取引ポジションの人気は、確実に上昇しています。

 しかし、このようなポジションを維持していく場合、特に値動きのリスクについては注意が必要です。人気の高金利通貨のひとつに英ポンドがありますが、1年間のスワップポイントによる期待収益が1ポンド当たり9円程度です。これに対して、年間の値幅(上下幅)は、30円以上あることは決して珍しいことではありません。過去の実績では50円以上動くことさえあるのです。例えば、10万ポンドの買いポジションで、年間で90万円程度のスワップポイントを期待したと想定します。もし、持った時点から30円の円高に進んだ場合、評価損は300万円まで膨れ上がります。その後、戻るという保証はどこにもありません。取引金額を増やせば増やすほど、スワップポイントによる受け取り総額も支払い総額も増えることになります。しかし、同時に値動きによるリスクも同じだけ増えていることを常に考えておかねばなりません。高金利通貨とは言え、値動きが本格的に逆に動いた場合、スワップポイントでは到底カバーできない損が出る可能性があるのです。

 値動きについても考えてみましょう。高金利が人気になって買いが出やすいと想定すると、上昇する期待が強そうに感じられます。しかし、スワップポイントを前提にした長期的投資においては、そうした図式はあてはまりません。金利が高い国は、それだけ物価も上がりやすくなっています。ここで、物価を介した購買力平価(外国為替レートが自国通貨と外国通貨の購買力の比率により決まると考えること)から考えてみましょう。

 A国とB国があります。それぞれの金利は以下のとおりです。

 ・A国:0%
 ・B国:10%

 レートは1A=1Bで、例えばリンゴ1個の値段も1A=1Bです。
 1年後に1Aはそのまま1Aですが、1Bは10%の金利が付いて1.1Bになっています。リンゴの値段もB国では1.1Bになっているはずです(でないと誰も物を作りません)。リンゴの価値は変わりませんから、リンゴを介すると、レートは1A=1.1Bになっていることがわかります。A通貨高・B通貨安です。
 実際には、上記の例ほど単純ではありません。短期的に金利は世界の資金を集める要因になっているからです。歴史的に見ても、高金利通貨=恒常的な通貨高にはなっていません。どちらかというと、買いというよりも売られ気味であることは意識しておきましょう。